『佐伯、今日はごめん。変なとこ見せちまって』
俺はお詫びに佐伯を家まで送った。
『別にいいが。何かあったらいつでも言ってよ。力になるけん』
『ありがとな、じゃぁ』
俺は右手をあげて、背を向けて歩き出した。
何㍍か歩いたところで佐伯の声がして後ろを向きなおした。
『奏くん…!あたしは、奏くんのいいところいっぱい知ってるが!!
自信もって!』
そう叫ぶ佐伯に俺は笑って、おぅ、と言った。
その出来事が、夢花と付き合ってる時と重なった。
君が笑って
俺が笑う。
俺が笑って
君が笑う。
それが当たり前だったけど何よりも幸せだった。
あの砂浜にも
俺の腕の中にも
俺の隣にも
君の面影が残ってる。
夢花を
忘れられる日なんて来るんだろうか…?
でも今は忘れたくないんだ。
君の笑顔も
声も
温もりも
まだ、記憶の中にいてほしい。
夢花…
俺はまだ無理だけど
夢花はもぅ俺を過去にしたんだろうか?
叶うことなら
俺もまだ君の記憶の中にいたい。

