―奏side―
玲音たちと過ごす夏休みは楽しいけれど何かが足りなかった。
それは考えないでも分かる。
逆に考えないようにした。
今日は7月31日。
今年も花火大会があった。
玲音と大とみいと見に来ていたけど、やっぱり気になる。
今日は、夢花の母親の命日。
絶対にないけど…まさか、が何度も頭によぎった。
あの砂浜に夢花が来ているかもしれない。
俺は玲音にだけ伝えた。
玲音は行ってこい、と背中を押してくれた。
走って砂浜に向かった。
あの階段。
心があの日を無意識に思い出す。
ふと、階段に何かの影を見た。
暗くて、よく見えない。
俺はその影に向かってもう一度走った。
近付くと、それが何だかはっきり分かった。
『花…』
そこには花束が添えてあった。
俺はその花束を手にとった。
優しい香りが鼻をくすぐる。
パサ―
何かが砂浜に落ちて、俺はそれを拾い上げた。
俺の動きは止まった。

