あたしは、冬休みを目一杯楽しんだ。
毎日が早送りみたいに過ぎていって、あっという間に島根を発つ日がやってきた。
『夢、荷物はこれで全部?』
みいがあたしのボストンバックを指差して聞いてきた。
『うん。忘れ物はないと思う』
『じゃぁ、行こっか』
あたしとみいは家を出た。
駅に向かう途中にあの砂浜の前であたしは立ち止まった。
『夢…、駅で待ってるけん』
『うん。みい、最後までありがとう』
『いいが、じゃぁまた後でね』
みいの後ろ姿が見えなくなって、あたしは奏に電話をかけた。
いつもの場所に来てほしい、と。
10分後くらいに、奏が息を切らしてきた。
『夢花…!迎えに行こうと思ってたんだけど…』
『奏、座って』
あたしは、自分が座ってる階段の隣を指差した。
『あぁ』
奏はためらいもなく隣に座った。
言わなくちゃいけない。
このかけがえのない時間、大好きだったよ。
でも、あたしは決めたからもう、戻れない。
奏は幸せに…ならなきゃダメ。

