あたしはその夜、奏の携帯に電話をかけた。
“PLLL……”
“夢花!”
『奏…?』
“あぁ!”
『ごめんね…。ずっと、連絡しないで…。あたし…』
“もういいが…。今こうやって連絡くれたんだが。俺は…夢花を信じてたけん”
『奏…。ありがと…、こんなあたしを信じて待っててくれて…』
“当たり前だが…!何度も言ってるが!俺には夢花だけなんだが”
何だか自然に涙が出てきた。
それは、久しぶりに奏の声を聞いたからなのか…
信じてくれてた奏の優しさになのか…
なぜだか、分からないけど…
悲しい涙じゃなかった気がした。
過去が、想い出が一つ一つ積み重なっていく。
今のあたしは、たくさんの過去と想い出でできてる。
でも、奏に出会えて恋をしたコトは過去にしたくない。
あたしは、進まなきゃいけないんだ。
ママの悲しみも苦しみもあたしが背負っていく。
それくらいで、つぶれないように…あたしは強くなるんだ。
『奏…、冬休みには島根に帰るね。今度はもっとゆっくりしていく』
“おぅ!迎えに行くけん、待っとってや。楽しみにしとる”
『あたしも楽しみ。じゃぁ、またすぐ連絡するね』
“夢花…”
『ん…?』
“大好きだが”
一瞬、言葉が出なかった。
すごくストレートで胸が熱くなった。
『あたしも』
奏は静かに電話を切った。

