―奏side―
俺は夢花を守りたかった。
孤独からも
悲しみからも…。
けど、その思いが結局夢花を苦しめた。
“手を…離して”
泣きそうな顔で言う夢花に俺は言葉を返せなかった。
どうして…
誰よりも愛しい君のコトを
幸せにしてあげられないんだろう…。
本当は…知ってた。
夢花が東京に帰ったコトを。
ずっと、駅で夢花を見送ってた。
夢花の後ろ姿は小さくて、弱くて…抱きしめたくなるのを必死でこらえた。
強引な愛情なんて、今の夢花には必要ない。
もっと、優しく包めたらよかったがや…?
電車の発車ベルを聞きながら、俺はそんなことを考えてた。
『奏、よかったがや?夢、ホントに帰っちゃったが』
『みい、気づいてたんか…。今は、何言っても無駄だが。あいつの気持ちは変えられん』
『あたしは、夢の気持ちも分かるけん。けんど、奏の気持ちも分かる。どっちも間違ったコトなんかしてないが…。お互いが想いあっててもうまくいかないコトはあるけん』
『なんで、うまくいかないがや…?俺は、ただ好きなだけなんだが。難しいな…』

