君の隣





予定よりは、ずいぶん速くなってしまったけどあたしは東京に帰るコトにした。




ここは、居心地が良すぎる。





その温もりがあたしを弱くする。




東京へ発つ日―



あたしは1人で海に来ていた。




奏といつも座る階段に1人で腰をおろした。




『ママ…。あたし、強くなるからね。ママだってこんなあたしは嫌でしょ…?これ以上、あたしみたいな思いをする人はいちゃいけない。同じ苦しみを皆に分けちゃいけない』





波の音が、ママの声みたいに…


あたしの声に反応してるみたいだった。





『ママの笑顔が大好きだった。あたしもママみたいに笑えるようになるから…。でも、ママみたいに壊れないように…。 そしたら、また会いに来るね。見ててね、あたし頑張るから』






あたしは立ち上がった。




駅には、みいが来てくれた。




奏には言わなかった。




奏が来たら、あたしどうなるか分からなかったから。




『夢…。こっちに帰ってこれないなら、あたしが行くから。電話してね』





『うん。みい、ホントにありがとう。大丈夫。ちゃんとまた帰ってくるから。約束』





みいの目に涙がたまってた。




あたしは電車に乗り込んだ。





想い出がまた1つ積もっていく。



それが、甘くても苦くても…



未来が幸せであればそれでいい。




電車の発車ベルが、遠くに聞こえた。