君の隣





着いたのは…



あたしたちのいつもの場所だった。




『奏…』




奏はあたしの手を握ったまま、階段に腰をおろした。




あたしもゆっくりと隣に座った。



ここは、あたしたちのいつもの場所でもあり…



ママが死んだ場所でもある。




苦い想い出も


甘い想い出も



ここに座ると思い出すコトがいっぱいありすぎる。




あたしは目を閉じた。




ママが海に入っていく光景が浮かんでくる。





“夢花…。幸せになってね…。絶対に”




そんな風に、きれいな笑顔で笑いながら消えていく。




あたしの中に


孤独と苦しみだけを残して…





『夢花、我慢すんな…。今だって心の中では泣いてんだろ…?
俺は夢花の支えになれん?自分が情けないが…』





奏がそんなに優しいから…



あたしは泣いちゃったんだよ…。



奏があたしをギュッと抱き締める。




あたしの苦しみを奏にまで与えてしまった…。




奏には…重すぎるでしょ…?




あたしは


いつか、奏を壊す。




あたしは、奏のそばにいちゃいけない。




奏の腕の中でそんなことを考えて…。



涙を流した。




ヒューーーーー


バンッ――――――!




花火の音がやけに胸に響いた。