いつの間にか、大とみいの姿は見えない。
2人で仲良く?回っているんだろう。
あたしたちも、色んな屋台を回った。
『奏くん…?』
かき氷を食べていると、後ろから奏を呼ぶ声がした。
振り向くと、莉乃が甘い笑顔で微笑んでた。
『佐伯』
『デート…?仲いいけんね、2人は』
奏は恥ずかしそうにまぁな、と呟いた。
莉乃の瞳は甘いのにどこか鋭くて恐怖感さえ覚えた。
まっすぐに、あたしと奏をとらえてる。
『夢ちゃん』
『ん…?』
莉乃はあたしの耳元で囁いた。
『夢ちゃんは気付いてるよね…?幸せなんてもろい。誰かが揺さぶればすぐ壊れるものだけんね』
こんな言葉を甘い、柔らかい声で囁く。
天使みたいな悪魔。
莉乃はあたしの耳元から離れるとニッコリ微笑んだ。
『じゃぁ、またね』
莉乃は方向を変えて、人ごみの中に消えてしまった。
『夢花。何言われたん?』
『大したことじゃないよ。それより、花火もうすぐじゃない?』
『あぁ。そうだな。夢花…俺、花火の絶景ポイント見つけたんだが』
『絶景ポイント…?』
奏は頷くと、あたしの手をとって走り出した。

