『玲音も東京行くが…。
俺はちょい寂しくなるが』
夜、夢花に玲音の東京行きを報告した。
“玲音も社長の息子だもん。色々あるよね。あたしにはよく分からないけど”
『あぁ。でも、あいつ無理しとるんじゃないかと思って…』
“無理してるって…?”
『ほら、あいつはあんまり親と仲良くないけん。
東京でも、ずっと辛い想いしとっただろ…?
島根は夢の国で、東京は現実だって言っとった。
独りでも、立っていけるように強くならなきゃいけんって』
“強く…ね。 玲音は島根がホントに好きだったみたいよ。
自分が自分でいられる、みたいな。
自分の帰る場所はあそこだけだって言うくらい。
だから、東京に来るのホントは辛いと思う。
けど、玲音が決めたコトだから”
『うん…。
俺はちゃんと見送ろうと思う。
あいつが決めたコトだけん…。
俺が応援しなきゃいけん』
“そうだね。
あたしも応援するよ”
『夢花はどうなの?
東京は夢花には合わん?』
“島根に比べると、人がうじゃうじゃいて、びっくりするよ。
あたしも、島根の方が好きかな…。
ここでは、時間が目まぐるしく流れてて他人のコトは気にしない世の中。
皆が、今日を必死で生きてる。
あたしのペースには合わないかも”
『そっか…。
とりあえず、元気でやれよ。
辛くなったら、帰ってきていいが。
いつでも、待っとるけん。
俺は夢花の味方だが』

