君の隣




夢花が東京に行った、次の日。




玲音から話があると言われ、家のリビングで向き合って座っていた。




『俺、今月中にはこの家を出ていくと思う』





『は!? どういうコトだよ!』




『昨日、親から連絡があったんだ。 父さんが倒れたから、東京に帰ってこいって』





『高校はどうするが…? こっちのに受かっとるだろ?』




『実は、東京の高校も受けてたんだ。親がうるさくてさ。

俺はここに残るつもりでいたから反対されてたけど入学は断ろうと思ってた。

けど、状況が変わった。

父さんがいつどうなるか分からないから、後継ぎの俺は島根の高校じゃなくて、レベルの高い東京の高校に行かなくちゃいけない』




後継ぎ…



まだ高校生にもなっていないのに未来は決まっている。




現実感のない、玲音の話を俺は黙って聞いていた。





『お世話になりました。
よかったよ、ここに戻ってこれて…。
でも俺は帰らなきゃ。 現実に』




『現実…?』





『東京に比べたら、ここは夢の国みたいなものだよ。

落ち着いてて、暖かくて…

俺に合ってるのは、多分こういうところ。

けど、そうは言ってられない。

逃げ出さないで、立ち向かわなきゃ。現実ってヤツにさ。


独りでも、立っていけるように強くならなきゃいけないから』




玲音は、自分の弱さを隠して、強くなろうともがいていた。




何だか


夢花と重なった。