3月15日…
今日は中学の卒業式があった。
そして、あたしは明日には島根を発つことになっていた。
薄暗くなってきた、夕方の砂浜にあたしは奏と2人でいた。
当たり前だった奏の隣も、東京に行けば当たり前じゃなくなる。
この大切でかけがえのない時間もあたしの日常から消えていく…。
『夢花…、離れてたって夢花は1人じゃないけん…。
苦しくて、辛くて、泣きたい時は俺がいつでも飛んでっちゃる。
東京なんか、近いけん。
大丈夫だが。俺らは絶対大丈夫だが』
大丈夫、という奏の言葉を信じるコトしか今のあたしにはできない。
『奏のそばにいれるコトが当たり前すぎて、気付けなかったけど…。
あたしの中で奏は太陽みたいに大きな存在なの。
ずっと、一緒にいたいと思える。
奏と出会えたコトは当たり前なんかじゃない、奇跡なんだよ…。
好きよ…奏…。
距離なんか、カンケーない。
あたしの気持ちは何も変わらない。
ずっと、ずっと、愛してる…』
『俺もだが…』
奏の声が震えていた。
『今までも、これからも夢花だけだが。
夢花しか見えん…。愛してる』
夜風があたしたちを優しく包むように吹いた。
奏の温もりがあたしの体を暖めていく。
神様…。
どうか、今だけは時間を止めてください…。
まだ、愛しい人の温もりに触れていたいから…。
大切な人のそばにいたいから…。
あたしの目から涙がこぼれた。

