君の隣




『奏…。話があるの…大事な話。』




寄っては、引いていく波を見ながらあたしは奏に話し始めた。





『どげした?そぎゃん真剣な顔して』





『パパの転勤が決まったの。
転勤先は東京だって。
パパは今月中に島根を発つみたい』




奏は複雑な表情をしていた。




『夢花も…、一緒に東京行くんか…?』




『パパは、残ってもいいって言ってくれてる。

あたしも、ここを離れたくない』




『じゃぁ、残るんか?』




不安げな瞳であたしを見つめる。


いつもの強気な目はどこにいったのよ…。


あたしまで、切なくなるでしょ…?




『とりあえず、中学の間はここに残ることにした』




考えて、考えて、出した答え。



中学の間は…

奏のそばに…ママのそばにいたい。



この砂浜で君といたい…。




『そっか…。高校は…』




『まだ分からないけど…
あっちの高校に通うかもしれない』




『1年は一緒にいれるんか…。

大丈夫だけん、離れてたって何も変わらんよ。

俺らなら、大丈夫だけん』




奏は力強く言い切る。


そういうところも、好きかもしれない。




迷いがなくて、まっすぐで―。



その意思の強い瞳が愛しいんだ―。