oneself 後編

奈美はその頃、地元の専門学校に進む予定だった。


でもそれを目撃した高3の9月、進路を変更した。


6歳上の姉は既に結婚していて、奈美は両親と三人で暮らしていた。


これからも、それを望んでいた家族。


奈美が家を出て、大阪の大学に進学したいと言った時は、すごく反対されたと言う。


地元の専門学校でも資格は取れるのに。


いきなりの進路を変更に、両親が戸惑った気持ちも分からなくはない。


それでも必死に両親を説得した。


先輩と同じ大学に行きたいという一心で。


「それ以来、両親と気まずくなってん」


そうポツリと呟いた奈美の表情は、ひどく淋し気だった。


付き合っていると、信じていた奈美。


「でも先輩の中では、自然消滅のつもりやったんやと思う」


進路の変更は、先輩には秘密にしていた。


合格出来るか分からなかったし、びっくりさせたかったから。


そして、先輩の重荷にならない為、受験勉強の為と、連絡を取らなくなった。


「久しぶりに合格したって連絡したら、先輩メッチャびっくりしてたわ」


そう言って、あたしに笑いかけた奈美。


その笑顔は、どう見ても無理しているようにしか見えなかった。


受験勉強に励む間、不安がなかった訳じゃないだろう。


それでも、幸せな未来を夢見て、自分の気持ちを抑えてたんだよね…