oneself 後編

そして、サプライズで先輩の元を訪れた奈美が、目にした光景。


それは、先輩の部屋で過ごす、今の彼女とのツーショットだった。


「え、じゃあそこで別れたん?」


あたしの問いかけに、奈美は少し考えてから、「ううん」、と答えた。


「あたしは、信じてたから…」


そう付け加えた奈美は、自虐的に微笑んだ。


その後の電話で、先輩は奈美に言った。


奈美の事は、変わらず好きだと。


でも今の生活が忙しくて、会う時間はなかなか作れないと。


淋しい思いをさせるくらいなら、別れた方が良いかも知れないと考えてしまうと。


そして、部屋に遊びに来ていた女性は、ただの友人だと。


そう言われた奈美は、先輩を信じた。


そして…


先輩と同じ大学に進む事を決めた。


「あたしの淋しさとか不安がさ、先輩を苦しくさせるねん。それが別れに繋がるんなら、耐えなあかんと思って…」


奈美の話に、あの日、京都での哲平との光景が重なった。


付き合っている状況での、淋しさや辛さ。


別れた時の、淋しさや辛さ。


あたしも…


耐える事を選んだ。


「離れてからちょうど半年。だから後半年耐えれば、また昔みたいに戻れると思ってん」


そう言った奈美の気持ちは、痛いほどに伝わった。