あたしは、「未来やけど、奈美いるんやろ?」と、ドア越しに問いかけた。


ドアの向こうで、奈美があたしを確認出来たら、きっと出て来てくれるはずだ。


あたしはケーキが入った袋をぎゅっと握り締め、ドアが開くのを待った。


ガチャ…


金属の鍵を回す音。


ゆっくりと開いたドア。


チェーンが掛かったままの数十センチの隙間から、1週間ぶりに奈美の姿が見えた。


やっぱり家にいたんだ…


「ごめん、心配やったから」


チェーンを外し、ドアを開けると、奈美は「ん…」と低い声で答え、くるりと背中を向けた。


上がっていいのか悩んだが、追い返す訳でもなく、そのまま中へと進んで行く奈美の背中を追いかけた。


短い廊下を進み、テーブルの前にちょこんと座った奈美の向かいに、あたしも腰をおろす。


「久しぶり」


「うん」、とだけ答える、元気のない奈美。


「これ、買って来たし、食べよう」


袋から箱を取り出し、それを開けて見せると、少しだけ奈美の表情が和らいだ気がした。


「待ってて」


立ち上がった奈美はキッチンへ向かうと、フォークとお皿を手にして戻って来た。


あたしがそれを取り分けている間に、奈美は紅茶を入れてくれた。