あたしを玄関先で出迎えてくれた哲平は、あれから少し寝てしまったようで。


スウェット姿に、少し癖のついた髪で、目をこすりながら、2階から降りて来た。


「大丈夫?疲れてるん?」


テーブルの前の、いつもあたしが座る場所。


ゲーセンで取ったプーさんのクッションを抱えながら、あたしがそう尋ねると、哲平は笑って「大丈夫」と答えた。


テレビから流れるお笑い番組をぼんやりと眺めながら、ここ最近の出来事を話し合う。


そうは言っても、哲平は高校時代の友達から久し振りに連絡が来ただとか、出勤途中で見かけた変わったおじさんの話だとか、あたしを気遣ってか、仕事の話は一切しなかった。


あたしが昨日の事を話せば、哲平も少しは気が楽になるかも知れないな。


ベッドにごろんと寝転んでいる哲平は、さっきからあくびばかりで。


仕事で疲れてるんだよね?


やっぱり眠たいよね?


そんな事を思いながら、昨日の翼の言葉を思い出す。


こんな哲平を知っているのは、あたしだけなんだ…


そう思うと、不思議と嬉しくなった。


前までのあたしなら、せっかく一緒にいるのに…と、イライラしていたに違いない。


やっぱり翼に話して良かったな。


「昨日は楽しかった?」


ふいに哲平が尋ねた一言。


ちゃんと言わなきゃ…


あたしはギュッと手を握り絞め、真っ直ぐに哲平を見つめた。


「あんな…」