oneself 後編

その用紙を見つめながら言葉に詰まるあたしを心配してか、翼はあたしの顔を覗き込んだ。


「未来ちゃん?」


「え、あ、うん…」


ふいに目をそらし、用紙の隣にあったボールペンを手に取った。


本当にあたしに出来るの?


そんな不安はもちろん、でもそれよりも、あたしは必要とされているのだろうか?


そっちの方が気になった。


哲平の面接に付き添った時、先輩はもちろん、オーナーも哲平に働いてもらう事を望んでいた。


それだけ哲平は、ホストとして通用するほどの容姿と、話せば伝わる人柄の良さがある。


あたしは…


ボールペンを握り締めたまま、いっこうに書かないあたし。


それを心配そうに見つめる翼。


その時、店長が優しくあたしに問いかけた。


「何に悩んでるんや?」


「えっ…?」


用紙から顔を上げると、店長はそんなあたしにイライラする様子もなく、どちらかと言えば翼と同じように心配そうな表情で、あたしを見つめていた。


ここまで来て、やっぱり働けませんなんて申し訳ないよね。


店長にだけじゃない。


紹介してくれた翼にだって、迷惑がかかってしまう。


「いえ、何でもないです」


あたしは軽く深呼吸をし、意を決して、握っていたボールペンを走らせた。