「未来ちゃん、場内2本も取れてたじゃん。すごいね〜!」


もうジョッキの半分ほどのビールを飲んだ翼が、口元の泡を拭いながら言った。


「すごくなんか…」


そう言ってもらえるのは、やっぱり嬉しい。


でも本当に今日のお客さんはイイ人ばかりで、翼が隣でフォローしてくれたからこそ、取れたものだと思う。


「たまたまやし、翼のおかげやん」


そんなあたしに、「謙虚だね〜」と、翼は笑って言った。


土曜の居酒屋は、こんな時間でも賑わっていて。


あたし達と同じような、大学生くらいの子。


スーツ姿のサラリーマン。


仕事終わりかと思われる、派手な風貌の女の子もいた。


注文した料理が次々と運ばれてくる中、あたし達はそれらをつつきながら、仕事の話をした。


店長はああ見えて、すごく優しい人だとか。


トイレ掃除をしていた黒田君は、本当に愛想のない人だとか。


お客さんの中には、付き合ってくれとしつこい人や、体を触ってくる人もいると言う。


やっぱりそういう人もいるんだ。


今日のお客さんのような人ばかりじゃないんだ。


そんなお客さんについた時、あたしはちゃんと対応出来るのだろうか。


テーブルの上の料理の皿が、だいぶ空になった頃。


あたしは2杯目の柚子サワーを、翼は3杯目のライムサワーを頼んだ。


トロンとした目の翼は、少し酔っているようだ。


あたしも1杯だけだけど、体が熱くて、フワフワとした気分だった。