彼に促され、奥へと足を進める。


あたし達がソファーに座ったのを確認すると、彼はまたすぐにノートに向かった。


「今日さ、未来ちゃんの事話したら、指名のお客さんが、友達連れて来てくれるって」


隣で翼が携帯を開きながら、嬉しそうに話す。


あたしは落ち着きなく店内を見回しながら、「へえ〜」とだけ返した。


今後の面接、その後の仕事。


それらを考えると、胃が痛くなってきた。


面接で落ちたりしないだろうか。


落ちたら落ちたで、ホッとする気もする。


でも、君には無理だよ。


なんて言われてしまったら、やっぱり凹んじゃうだろうな。


それでもあたしは、この場に自分は不釣り合いな気がしてならなかった。


不安と後悔とで揺れる中、男性スタッフの切れの良い挨拶が耳に届く。


「おはようございます!」


来たんだ…


心臓がドキドキと脈を打つ。


「店長、おはよう」


隣で翼が言うのと同時くらいに、あたしはスクッと立ち上がり、頭を下げた。


「そんなにかしこまらんくてもええって」


フッと笑いながら、ソファーにゆっくりと腰をおろす、店長と呼ばれるその男。


グレーのストライプのスーツ、ワイン色のカッターシャツ、山吹色のネクタイ。


ガッチリとした体型で、サングラスをかけている彼の風貌に、ますます緊張が高まった。