「疲れた~」


隣で奈美が、肩をポンポンと叩きながらぼやく。


2度目の施設介護実習。


季節は流れて、あたしは無事に2年生になれた。


来年には、あたしはどこかの施設で、介護福祉士として働いているだろう。


髪の毛も、爪先も、何もかも。


あの頃のように、綺麗に着飾る事は出来ないけれど。


あたしはようやく自分を取り戻せたような気がする。


見た目だけの華やかさなんて、もういらない。


周りが見えなくなるほどに、人を愛する事はすごい事だと思う。


でも、大切な事が見えなくなるほどに、自分を見失うのは怖い事だとも思う。


あたしは、いつか訪れる、幸せな未来へと向かって歩き出した。


夢を持って。


自分を持って。


そして1年8カ月の、苦しいくらいに愛したあの人との思い出を胸に…