どれくらい、あたし達は黙りこんでいたのだろう。


哲平がゆっくりと立ち上がる気配に、顔を上げる。


哲平はそのままベッドに移動すると、ベッドのきしむ音と共に腰を沈めた。


「未来…」


聞こえないくらいの小さな声。


二人の視線が絡まると、どちらも目をそらす事なく、見つめあった。


相変わらず、苦しそうな顔の哲平。


でもきっと、あたしも同じ顔をしているのだろう。


あたしはゆっくりと立ち上がった。


その苦しさをぐっと飲み込んで。


好きで。


好きで。


好きで。


どうしようもなかった。


ただそれだけ。


一度ははねのけた哲平をきつく抱きしめる。


哲平は恐る恐るあたしの背中に手を回す。


折れそうなほどに抱きしめ合った頃…


やっぱりあたしには、この人の腕の中が一番安心出来るんだという事を思い知った。