これは夢なんじゃないの?


そう思ってしまうくらいに、ありえない現実。


思わず頬をつねってみる。


「痛っ…」


思わず口から漏れた言葉。


馬鹿みたい。


頬をつねっている自分も。


こんな状況の自分も。


何もかもが。


そう思ったら、何だかおかしくなって、あたしはフフっと鼻で笑った。


冷え切った体と心を尚もいじめるように、冷たい風が吹く。


「寒っ…」


そう声に出すと、あたしはようやく元来た道に、一歩を踏み出した。