2月に入り、確実にお店は暇になっていた。


1組しか客のいない店内を、ぼんやりと眺める。


時期的な事もあるだろうけれど、ヒナタさんが辞めた事が、何よりの原因な気がする。


「こんなに暇じゃやばいよね」


そう言って、嘆いている女の子達。


耳を澄ませば、梅田のホストに通っているようだった。




「あ〜、ホンマ暇過ぎやし」


そして今、目の前でそう嘆くのは、久し振りにあたしとの時間を作ってくれた哲平だった。


聞けば、今日の1部は1組しか客が入らなかったという。


ビールを数口飲み、それをテーブルの上に戻すと、哲平は頭をもたげて呟いた。


「ホンマに、今月頑張らなやばいしな…」


哲平の頭のてっぺんを見つめながら、あたしは目の前にあった枝豆に手を伸ばす。


そう出来る事なら、一刻も早くナンバー1になって、もうホストなんて辞めて欲しい。


でも、あたしが思っていた以上に。


哲平の焦りは大きかったんだ。


「もう今月しかないしな…」


フッと顔を上げて、あたしを見つめながら、そう呟く哲平。


首をかしげるあたしに、哲平は言った。


「今月で聖夜さん辞めるねん」


「えっ?」


今月で聖夜さんが辞める…?


驚いて目をパチクリさすあたしに、哲平は「あれ?」というような表情を見せる。


順を追って説明する哲平の話を聞きながら…


あたしは自分の鈍感さに呆れていた。