あれから、3カ月の月日が流れた。


あたしの胸元には、あの日哲平から貰った、シルバーのネックレスが光っている。


大丈夫、信じてる。


そう思えたのは、ほんの一瞬。


やっぱり不安は、消えてはくれなくて。


それでも苦しい時や辛い時には、ネックレスをギュッと握って、願いを込めた。


10月の売上で、哲平は聖夜さんに続く、ナンバー2の位置まで上り詰めた。


そしてそれは今も抜かれる事なく、哲平は確実に聖夜さんに近づこうとしていた。


あたしはいつだったか、哲平に尋ねた。


「いつまで続けるつもり?」、と。


「聖夜さんを超えたい」


答えにはなっていない、そんな言葉が哲平からは返ってきた。


聖夜さんはここ2年ほど、その座を譲る事なくやってきた人。


お店の中だけでなく、ホスト業界でも名の知れた人。


ナンバー1なる事は、いくら哲平でも、簡単ではない事をあたしは分かっていた。


12月は最も売上が期待できる月で。


哲平は日曜も休みを返上し、客との営業を率先して行っていた。


一日に数人の客と、時間をずらして、ご飯を食べに行ったり、カラオケやボーリングに行ったり。


それは、あたしとの時間が減っていく事で、賄われていた。


それでも結局、哲平は聖夜さんを抜く事は出来なかった。


「今月こそは…」


哲平はそう言った。


不安にならない訳もなく。


不満がない訳でもない。


でもナンバー1になれたら…


哲平はホストを辞めてくれるはずだから。


そんな期待を胸に、あたしもそんな生活に少しずつ慣れてきた頃だった。