「あ、そうや!」


長い抱擁とキスを終え、哲平は思い出したように声を上げた。


「昨日喋ってた事やけど…」


哲平の左手に指を絡めながら、何の事か分からないあたしは首をかしげる。


「無理やわ、絶対あかん」


その左手にギュッと力が込められるのを感じる。


「仕事の事」


昨日の居酒屋での、翼の話をした時の会話が頭に浮かんだ。


「未来は俺だけのもんやし」


そう言った哲平の手は、あたしの指先をスルリと抜けた。


そしてあたしに背中を向け、歩き出そうとする哲平。


照れてるんだよね?


きっと耳なんか真っ赤だよね?


あたしは軽い足取りで哲平を追いかけ、腕に絡みついた。


「哲平、好きやで〜」


二人でヘヘッと笑い合って、あたし達はゆっくりと歩き出した。


いつか訪れる、あたし達の最高に幸せな未来を夢見て…