多分、5分くらいはそんな状態だった。


もうかける言葉が見つからなくて。


ただただ黙って、あたしは待っていた。


そして、幸子はようやく口を開いた。


「ごめん…」、と。


あたしは見えるはずもないのに、大きく首を左右に振る。


「こんな時間にごめんな。意味わからんよな。また詳しく話すわ。あ、明日会うよな?」


精一杯元気な声を出して、一気にまくしたてる幸子。


そのまま、「ごめん…」、そう謝って、幸子は一方的に電話を切った。


プーッ、プーッ…


電話から聞こえる無機質な音。


あたしはそれを、しばらく聞いていた。


明日に話を聞こう、そう思って。


もう辺りは薄っすらと明るくなり始めている。


あたしはしゃがんで皺になったスカートを、パンパンと手で払った。


フウーッと小さく息を吐き出し、店内へと戻る。


”あの子”の席で、大量のシャンパンがおりている真っ最中だった。


ざっと計算しても、会計は数十万になるだろう。


あたしはそれを、ぼんやりと眺めていた。