夏休みを終えたあたしには、学校がひどく退屈なものに思えた。


入った当初は、哲平の事がおざなりになるほど、充実していたはずなのに。


あたしは何が変わったんだろう?


大学生活初の夏休み。


周りは真っ黒に焼けた肌で、土産話に華を咲かせている。


花火大会やバーベキューといった、夏ならではの遊びを満喫したり。


初の海外旅行に行って来たという子もいた。


久し振りに見た奈美も、もうすっかり立ち直ったようだった。


「見て、見て」


夏休み中に始めた手話教室の話を、手振りをつけながら楽しそうに話す。


「ここ卒業したら編入でもしようかな」


将来の夢を膨らます奈美は、本当に輝いた目をしていた。


隣で翼が、半袖から覗く白い腕を見つめて、「あたし達は陽の当たる生活じゃなかったね」と、笑った。


それでも、あたしも翼も。

 
人に自慢できるような毎日じゃなくたって。


時間を気にせず好きな人に会えた毎日は。


あたし達なりに幸せだったと思ってる。