oneself 後編

「今からお店来れへん?」


突然の言葉に驚くあたしに、哲平は順を追って説明する。


哲平の話はこうだった。


最近は、あたし達と同じく、哲平のお店も暇な日が多い。


そりゃ客の大半は同業者だし、こんな現状なら、飲みに行く機会も減るだろう。


現に翼も、前よりもハル君のお店に行く日が減っていた。


そして今日は水曜日。


前から、週の中では暇な曜日だと聞いていた。


電話越しに伝わった、静けさ。


どうやら今、哲平のお店は一人も客がいない状態らしい。


それは、あたし達の店に関しても珍しいことではない。


7時に出勤して、30分ほどそれが続く事もある。


だから最近は、平日は8時から出勤になった。


哲平は必死にあたしに謝りながら、どうしても今日は他の客は無理なので、あたしに連絡をしたと言った。


そして、今日の飲み代は自分が払うので、あたしは一円も払わなくてもいいとも言った。


どうしてそこまでするのかは分からなかったけれど、哲平に頼りにされる事に悪い気はしなかった。


あたしは「分かった」と言い、くるりと体の向きを変え、哲平のお店へと向かった。