結局、この前と同じ居酒屋にやって来た。


翼はビールを、あたしはレモン酎ハイを頼む。


何だか、飲みたい気分だった。


「お疲れ~」


グラスがカチンとぶつかり合う音を聞いてすぐに、翼は興奮気味に口を開いた。


「今日来てた新しい女の子、絶対枕だよ!」


枕?


またしても聞き慣れない言葉に、あたしはキョトンとして翼を見つめた。


翼はそんなあたしの視線に気付き、説明し始める。


枕営業。


枕をともにする、つまり客と、体の関係を持つ事。


色恋営業。


色仕掛けの営業、客に恋愛感情があると思わす事。


「へぇ~」


あたしは驚きの声を上げながら、話を続ける翼に、耳を傾けた。


あたしがちょうど、翼の隣の席に座っているあの子を見ていた時。


やけに密着して座っているな、とは思っていた。


その時、聞こえてきた会話は…


客が泊まっているホテルに、この後、彼女が行くという約束だった。


あの場で、彼女に場内指名を入れる事と引き換えに。


「枕は駄目だよね」


そう言って、グイっとビールを喉の奥に流し込んだ翼は、あたしの顔を見つめて言った。


「でも、色はかけないと、客は引っ張れないよ」