目の前で突然泣き出したあたしを見て困っている白金。
必死に声を出そうとするけど、声が出ない。
伝えたいことが、たくさんあるのに。
もうこんな距離で話すことは二度とないかもしれない。
もう、もう二度と
頭に浮かぶのは雅ちゃんの隣にいる白金の姿。
もう二度と、あたしの隣には帰ってきてくれないかもしれない。
ずっと雅ちゃんの隣にいるのかもしれない。
このチャンスを逃したら、
きっともう白金の記憶は元には戻らない。
万が一戻ったとしても、雅ちゃんのことを好きになってしまっているかもしれない。
以前のような彼氏には、
なってくれない。
そんな事を考えているあたしの耳に届く白金の声。
「辛いか…?」
優しい声に胸がキュンとなる。
辛くないよ。
あたしは白金がそばにいてくれたら、何だって乗り越えられる。
あたしには白金が必要なの……。
心配そうにあたしの顔を覗き込む白金をみていると、記憶を無くしているのが嘘みたいで
あたしの隣にいてくれた時の
あの時の白金と過ごしているみたいで
辛くて、苦しくて、胸がキュンとなる。

