ーードクンッ
嫌な思いに、心が支配されていく。
ーーー「言うな」
ーーー「絶対言うな!」
頭の中で誰かが必死に叫んでいる気がする。
でも、今の俺には届かない。
「猛もしつけえんだよ。
そいつは俺の女なんかじゃねえから」
自分の口から投げ出されたのは、最低な言葉。
俺の言葉を聞いて、佐々野みあの近くに立っている女の顔が一瞬にして歪んだ。
「……涼……お前……
「俺…帰るわ」
猛の言葉を最後まで聞かずに俺は歩き出す。
…………猛も泣きじゃくってた女みたいに怒ればいいんだよ。
「どうして佐々野みあを助けないの!?」って俺の事を怒鳴り散らせばいいんだよ。
「……涼!!」
俺を呼ぶ猛の声がいつもと違う。
何で、お前が悲しむんだよ。
俺は、猛の方には振り返らずに足を進めた。