「…雪兎」


何かを決意したように俺を見据える雪華は
今までの俺が知っていた"妹"じゃなくなっていて

今まで以上に、"女"になっていて
どきり、と心臓が跳ねる


「私、ずっと考えてた」


よく通る声で話し出す雪華の言葉を
一言も逃すまいと耳を澄ます


「どうして、神様は私と雪兎を兄妹にしたのかって」


ぐ、っと唇を噛むの雪華を抱きしめて止めたくなるのをこらえる


「辛かったの。雪兎がお兄ちゃんなのが。死ぬほど。」


今度は俺が唇を噛む番になる
そんなに、俺の存在は疎かったのか?


「ひとつ屋根の下で過ごすのが、苦しくて。」


逃げ出したくなるのをこらえる
これが雪華の気持ちなんだから
最後まで聴くべきなんだ


「泣いても変わらないのがわかってたから。逃げ出したくなるのを、堪えて過ごしてた。」


「…っ、」



今は、雪華が想いを言ってくれている
逃げたら二度はない


「私を慰めた時も、辛くて。婚約者が居るって知ってもっと辛かったの。何であんなことするのかって…大嫌いに、なろうと思った。」


「あ、れは…っ!」


「聞いて。」


思わず声を出してしまったのを咎められて
ぐ、と黙る


「でも、無理だったの」


「…え?」


雪華は今まで見てきた中で最高の笑顔を浮かべた