台風で太陽が出ていないせいもあり、暗くなるのが早いように感じる。夏とは言え雨風で肌寒く感じる。
 「ボーズか…?ポーズなのか?」
遅ればせながら釣れる気がしなくなってきた。
 そんな時だ。ザブーンという音とともに、荒れ狂う波の中に水柱が見えた。
 「魚かデケェぞ、あれはキタかキタか鯨か?マグロか?やっぱ俺、持ってるわ」
 すかさず重いおもりをつけたルアーを力いっぱい投げる。
 「うりゃ」
コントロールばっちりだ。水柱が立った向こうに着水した。
 「カモ〜ン」
リールを巻いているといきなり竿がしなる。
 「キター」
思い切り合わせる。
 「よし、食った」
待望の大物に力が入る。そして壊れるかというぐらいにリールを巻く。
 「重い重い…けど、これは…」
まるっきり生命反応がない。
 「え〜?何これ…。ゴミか何かかよ〜こりゃ漂流物の木かなんかだよなー」
異常に重い。リールがなかなか回らないくらい重い。糸を切ってしまおうかと思ったが、糸がもったいない。しょうがなくゆっくりと引く。
 「この世に神はいねーのかよ…」
期待した分の落胆に襲われた。