「よ〜し、じゃあよ〜く見てろ?このユニホームに小野原選手のサインが現れるところを」
海人が手をバーンと叩く。
 「ん?…えっ」
由香里、祐也はもちろん、丸山と景子まで目が飛び出る程驚いた。
 「わ…わ…、お、小野原」
口を開けたまま後退りする祐也の目に映ったのは、間違いなく本物の小野原だった。
 「どうも、ケチな小野原です」
 「あっ…あっ…」
由香里の影に隠れてしまった祐也。頭をかきながらユニホームにサインを入れた。してやったりのドヤ顔をする海人。
 「どうだ、オッチャン嘘つかないだろ?」
 「う、うん…」
 「ネーチャン許してくれるか?」
 「う、うん…」
もう夢の中にいるようなポワーンとした顔の祐也。
 「ほら、どうせなら握手や写真撮ってもらえよ」
 「う、うん」
由香里の影からようやく出てきた祐也は憧れの小野原と夢のような時間を過ごす。
 「じゃあ遅いんでそろそろ帰ります。祐也君、おっちゃん凄いだろ?」
 「うんありがと」
由香里と丸山と景子はまだ唖然としていた。車に乗り、景子の隣に小野原が座っている。
 (なんで小野原さんが私の横にいるの…?)
まだ信じられなかった。
 「飯行くべな、小野原」
 「はい」
小野原を呼び捨てにする海人が謎だった。四人は普通のファミレスに入った。