変人

　車に乗り運転する。少し走ると海人が口を開く。
　｢なぁ景子…？｣
　｢は、はい｣
　｢…腹いっぱいになったら眠くなってきたんだけど。｣
　｢はっ？｣
　｢ちょい昼寝。｣
車をショッピングセンターの駐車場に停めた。
　｢腹いっぱいになると眠くなるんだよね。｣
　｢…(子供か)｣
　｢んじゃ、お休み…。グガーッ｣
あっと言う間に寝てしまった。
　(人間、こんな早く寝れるの…？)
寝つきの悪い景子には信じられなかった。海人の顔をジーッと見る。
　(なんか…変な感じ…。)
爆音を響かせる鼾が不愉快ではない。何故か微笑みさえ浮かべてしまいそうだった。
　｢私が今までミスしなかったのは、海人さんがしっかり指示出してくれたからじゃないですか…。｣
寝てる海人に口答えをしてみた。
　｢いつもすみません、海人さん…。｣
景子は寝ている海人の唇を指で触れ、その指を自分の唇にそっと当てた。さっきまで怖くて萎縮していた気持ちが安らいだような気がした。