空気は読まない割には人の心は読む。
 「あ、お前、今一体何しに来たんだコイツって思ったべ?」
ドキッとする景子。
 「い、いえ」
 「嘘つけ」
饅頭を口に入れすぎて慌てて茶を飲む。
 「ハァハァ、死ぬかと思った」
笑う丸山。
 「ホント、ガキみたいだな」
 「うるせっ」
完全にお客様に対する態度ではない。
 「でもな景子、ここまでくるにはたくさん失敗してんだよ、俺は。その度に謝って、そんでどうしたら相手が納得出来るのかいつも考えて行動したんだ。謝るだけしか考えてないお前とはそこが違うんだよ」
 「えっ?」
海人がミスした所を見た事がない景子は驚く。
 「今日のミスが海人君がやったなら、謝る前に工場に商品取りに行って今頃持って来てるよ。まだ完成してなきゃきっと自分で完成させて持って来てるよ。そこがネーチャンとの違いだ。」
 「は、はい…」
 「海人君はネーチャンより酷かったぞ?何回ミスしたか分からないけど、でも馬鹿みたいに何とかしようとしてくれたよ。その積み重ねが今のいい関係になってるんだよ。」
嬉しそうな表情を見せる丸山。横から香代子が言葉を挟む。
 「朝の3時に持ってきた事あったわよね〜。ハハハ」
 「ありゃいい迷惑だったな」
笑い声が響く。