自分の料理を美味いと言って貰えた事も嬉しいが、夢中になって頬張る海人を見ている事はもっと嬉しかった。
 かなり量があった夕食はあっと言う間に食べ尽くされた。
 「凄いね…、骨しか残ってない」
 「当たり前だろ?それが釣りする人間の魚に対する感謝の気持ちだよ。しかし、オメー、下手くそだなぁ、魚の食いかた」
 「ご、ごめん…」
海人の食べ方に比べると、魚に申し訳なさすぎる位に雑だった。
 「まぁ、女は頭とか皮とか苦手だもんな。責任は俺が取るよ」
海人は彩香の食べ残しをキレイにたいらげた。
 「う〜ん、美味かったいやしかし、ホント料理巧いね」
 「ありがとう」
それからたくさんの誉め言葉が続き、綾香を喜ばせた。
 「どれ、片つけは俺がやるよ。」
 「いいってば。私がやるから」
 「魚に対する感謝があれば、作ってくれた彩香への感謝もあるんだよ。」
 「ありがとじゃ、一緒にしよっ?」
 「ああ。」
二人は仲良く後片つけをした。お互い口には出さなかったが、幸せを感じていた。