「んんん…」
朝、目を覚ます海人。
 「ん?あれ?」
ベッドには自分一人しかいない。上半身を起こし考える。
 (あ、あれは夢だったのかな…全部…。)
お化けたこの話ではない。死体を釣り上げて一夜を過ごすまでの全てが夢だったのかと思えてきた。冷静に考えれば、全てが現実的ではない話に思える。
 (もし全部夢だったなら…寂しい、かな…)
何か胸が締め付けられる。
 すると一階から物音が聞こえる。
 (ゆ、夢じゃなかったか?そ、それとも…泥棒かっ)
どちらの可能性も否定できない。海人は忍び足で階段を降りる。
 物音は台所から聞こえてくる。しかも何かいい匂いがする。
 (泥棒が人ん家にあがりこんで腹減ったから飯作ってる?金目の物だけでは飽きたらず、人ん家の食材まで使って腹も満たす??なんて欲張りな泥棒だ)
普通に考えられない哀れな性。しかし彩香の存在がそれだけ非現実的的な事だと言う事だ。海人はそーっと台所に近づき覗き込む。
 (あ…)
海人が目にしたのは、裸にエプロンをして台所に立つ、何とも可愛い泥棒の姿だった。