「じゃ、お疲れ様でした〜。」
帰ろうとする景子を呼び止める清水。
 「なぁ北山。やっぱお前から海人に、明日釣りは止めるよう説得してくれないか?」
 「はぁっ??」
 「もし何かあったら大変だろ?今でさえこんな嵐なのに、ピークの明日っていったら物凄いだろ?」
 苛つきながら言う。
 「だったら部長が電話すりゃいいじゃないですか」
 「いや、俺な…、自慢じゃないが、あいつを説得出来た確率、0%なんだよ」
 「…、確かに自慢じゃないですね…」
 「という事で頼んだぜ北山じゃっ」
 清水はササーッと帰ってしまった。
 「ち、ちょっと部長…ま、丸投げしやがったわもう」
 バッグを机に叩きつけて、ドスンと椅子に座る。
 「釣りが好きで好きでたまんないんだから、釣りやりながら死ねたら本望なんじゃんね〜」
 そうは言ってみたが、ふと思った。
 「でもこんな嵐の中、危ないよね…。海人さんいなくなったら私困るし…。」
 困る…、それが仕事の面でなのか、それだけでないのか…景子は自分でも分かっていた。
 「一応電話しようかな…。」
 景子は携帯を取り出し海人の番号を呼び出した。