「北山、お前いつも海人と行動を共ににして、少しもそういう関係にならないのか?」
 「だって海人さんの会話は殆どが釣りの事と風俗…あ、いや」
 「ん?何??」
慌てる景子。
 「ほ、殆どが釣りと魚の話なんですよ?鰺が入れ食いだの大量のマイワシだの、ヒラマサが何だの…。まぁいつもお魚貰うから黙って聞いてますけど、万が一付き合って年がら年中そんな話ばかりされたらたまんないですよ」
 「確かにな…俺もあいつの釣り話聞いてるのはキツいわ。」
 「女の私にはなおさらですよ」
 「そうか…、しょうがないな…。」
どうやら諦めたようだ。景子も帰り支度をしはじめる。
 (確かに海人さん、仕事はできるし面白いし、性格明るくて滅多に怒らないけど、もし付き合ったら絶対釣りに連れていかれるんだろうし…あのイソメとかいう気持ち悪い虫をつかまなきゃなんないなんて絶対無理手も臭くなるし、私が釣りやるなんて有り得ない無理無理)
 景子には釣りをするかしないかの選択肢はなかった。
 (釣りキチでさえなければなぁ…)
またため息をついて席を立った。