「一つだけ言っておきたいんだけど、私、別にあなたのお金盗んだり、何かに陥れようってつもりは全然ないからね?本当だよ?」
 真面目な顔で言う。
 「それはお前が着てる服みりゃ、金に困った生活してた訳じゃないってのは分かるよ。ブランドもんだろ?」
 「あ、うん…。でも別に贅沢したい訳じゃない。服なんて何でもいい。助けて貰いたいだけなの。」
 「そっかぁ…。」
 「あ、あと…、助けて貰ったのに、たまにああいう態度取っちゃう事があるの、私…。感情をコントロール出来ないって言うか…。ありがとうも素直に言えない時があるの…。」
 神妙な顔つきになった。
 「お前、いい奴かも知れないな?魚好きみたいだし。」
 女性は少し可笑しくなった。
 (魚好きに拘るね〜変な人)
 微笑に気づき不思議に思う海人。
 「何か可笑しい?」
 「ん〜ん?別に?」
 非常にいい表情を浮かべた。海人にとって凄く心が安らぐ笑顔だ。
 「しゃーねぇ、お前の人生、背負ってやるよ。魚好きならなおさらだよ」
 「ありがとう」
 変人と変な女の変な生活の始まりだった。海に生きる男と海で死のうとした女…。人生をかけた愛が生まれた瞬間、台風が収束に向かっていた。