変人

　｢だって、遺書まで書いて出てきたんだもん。今更帰れないよ。｣
　｢そうは言ったって…。じゃあどうするんだよ。｣
　女性は少し考えてから言う。
　｢あなた結婚してるの？親御さんと同居？｣
　｢いや？一人暮らしだけど？｣
　｢じゃ、私を暫く預かって｣
　｢はぁっ？｣
びっくりする海人。
　｢だってあなたが私を釣らなきゃこんな事にはならなかったんだよ？あなたの迷惑より私の迷惑の方が大きいの。私に迷惑かけたんだから責任取るの当然でしょ？｣
　｢な、何訳わかんねー事言ってんだよ｣
　｢いーじゃん。｣
　｢そんな簡単に｣
困惑する海人。
　｢私はずーっとずーっと遠いとこから来たから、ここがどこだかも分からないし、遺書書いて出てきて行方不明なら、死んだと思われるじゃない？だから私は今までの人生も名前も全部無くして生まれ変わるしかないの。可哀想だと思わない？頼る人もいなくてか弱い女が知らない土地で路頭に迷うなんて？｣
　｢う〜ん…｣
　｢だから私を助けた責任取って｣
　(こいつ、何でそんな事を満面の笑顔で言えるんだ…)
半分呆れた。