(くっそ、何だよあの女は何で人殺し呼ばわりされて殴られなきゃなんねーんだよ)
 カッカしながらさっさと片付ける。すると背後から肩を叩かれた。
 「な、何だよ」
怒りながら振り返ると、先程の鬼のような表情が消え、ブルブル震える姿があった。
 「寒いよぅ…」
 そんな姿に海人も鬼にはなれない。
 「ちっ…、これ着ろよ?とりあえず俺の車で服乾かせよ。」
 「うん、ありがと…」
さっきの威勢は全くなかった。
 (な、何だよこいつは…)
背後をトコトコついてくる。
 「落ちるなよ?」
 「うん…」
大人しくついてくる。車に戻り道具をしまい、エンジンをかけ暖房をつけた。
 「シート濡れちゃう…」
 「気にすんなよ。助手席には誰も乗らないから。」
 「ありがと…。」
素直な態度に海人の怒りも消えた。
 「何で自殺なんてしようと思ったの?」
 「う〜ん、秘密…」
 「(素直なんだかひねくれてんだか…。)」
 暫く会話が途切れた後、海人が言う。
 「家まで送ってくよ。近いのか?」
 「…帰らない。」
 「はっ?」
 なんか面倒臭い事になりそうだと思った。