もうすぐ仕事が終わる。18時が近づくと安田海人はもうソワソワしてしょうがなかった。
　ここは茨城。地元のシノダクリエイティブという企業に勤める海人。明日は休みをとっている。なぜ海人がソワソワしているのかは周りの人間は誰でも知っている。
　そして18時になる。
　｢よっしゃではみなさんお疲れ様でした〜｣
　すぐに事務所を飛び出そうとする海人を部長である清水竜也が呼び止める。
　｢おい海人。明日はやっぱアレか？｣
　｢当然｣
　｢おまえ、明日はやめとけよ。こんな台風の中、釣りなんて｣
　釣りなんて…その言葉にムッとする。
　｢台風だろうが宇宙戦争だろうか、そこに魚がいる限り海に行くのが釣りキチってもんですよ。じゃっ｣
　もう何も聞かないみたいな雰囲気を出しながら出て行った。そんな海人をため息をつきながら見送る。
　｢おい北山、お前あいつに女の楽しさを教えてやれよ…。｣
　海人といつも行動を共にしている25歳の北山景子は答える。
　｢海人さんと魚の間を引き裂く事は絶対無理ですよ。｣
　景子は苦笑しながら言った。
　｢まったくあいつは35歳にもなって女の一人も作らないで釣りばかり…。どうしようもないな…はぁ…｣
諦め顔でため息をつく。