「…なんでお前は女装なんかしてんだよ。趣味か?」

「いえ。…話すと長くなるのですが…」

「ならいい。」

「聞けよ。」

「…はい。」

「実は…うちの母が事故で記憶喪失になり、私のことを女だと信じ込んでいるんです。」

「え…」

「母は入院していて私は親戚の家で生活しているのですが、母に会うときだけ、女の子を装っているのです。」

「お前…」

「母が笑ってくれるなら、それでいいんです。」

眉を下げて笑う凜太郎の顔を見ていたらなんだか悲しくなった。