「なあ凜太郎、凜子ってだれ?」

「は?」

「おばあちゃんにそう呼ばれてただろ?」

「ああ、私の母の名前です。」

「は?」

「おばあちゃんは私のことを自分の娘だと思ってるんです。」

「…」

「簡単に言ってしまえば、おばあちゃんの記憶は、母が高校生のときまで遡ってしまってます。おばあちゃんの中で凜子はまだ高校生で結婚すらしてません。だから『凜太郎』という男の子は存在してないんですよ。おばあちゃんの前では凜太郎ではなく凜子として振る舞ってます。」

「…凜太郎、それお前悲しくないのか。」

「仕方ないことですからね。もう慣れましたし。私は凜子として、おばあちゃんの中に存在してますし。」

「…」

「あ、ほんとにこのことは高校の誰にも言ってないので、口外しないでくださいよ。進藤くんにも矢神さんにも。桐生くんには女装の件を知られてるから話したんですから。」

「…ああ。」