痛い…
胸の辺りが苦しい…

そうだ…俺は……













「うわぁっ!!」
目が覚めるとそこは海の底だった。
何でかはわからないが俺は息ができ、体は地上の時と変わらず一緒の感覚だった。
「目が覚めたか…」
「誰だ!」
俺は突然の声の主を探すが、人が居るわけもなかった。
「こっちじゃ。何処を見とる。」
俺は背後から触れられた腕を振りほどき距離をとった。
「なっ……」
声の主は……“人魚”だった。
「お前は何者だ!」
「主こそ何者なんじゃ?」
「俺はっ……」
名前が…思い出せない。
「ふふふっ…自分の名も知らぬとはな。」
人魚は不敵に笑った。
「お前!!何か知ってるのか!!」
「何故そう思うのじゃ?」
「それは…」
「名がそんなに大事なのかや?」
「そりゃ…俺の…」
「諦めるんじゃ。」
会話を遮る声。
「一度“死んだもの”には価値など無い。ましてやそいつが人となれば尚更じゃ。」
その言葉の裏には怨み、妬み、苦しみが隠れてるように聞こえた。
「“死んだもの”か…」
「驚かないのかや?」
「……」
「まあよい。」
内心は穏やかじゃ無かった。でも俺は“感情”がわからない。

「俺は…“ ”だからな。」