息を切らしながら、無我夢中で走り続ける。

そして、やっと家にたどりついた。

「ただいま」も言わず、部屋へと駆け上がる。


トントン…トントン!

「勉、どうしてこんなに遅くなったの?なぜ連絡しなかったの?」


「ごめん。ちょっと……
別になんでもないよ。
本当に、ごめん。」

言い訳になっていない。

まだ体が震えいる。

こんな姿誰にも見られたくない。

母は僕に気遣いながらそのまま無言で下りていった。

また心配をかけてしまった。

ベットに寝転がり自分の手を見つめる。

(この手が…)

真理亜の胸の柔らかい感触がまだ残っている。

(ホント、情けないよね。僕…)

男のくせに涙がボロボロと流れてきた。