― 真理亜の自宅前 ―

タクシーが家に着く頃には真理亜もだいぶ落ち着いているようだった。

肩を貸して玄関先まで送ってあげた。

「じゃ、僕はこれで。」

「待って!お願い、すこしだけ一緒にいて。」

「い、いや、もう遅いし…」

こんな時間に女性の家に上がる訳にはいかない。

「私まだフラついて…せめて部屋まで連れて行って。」

僕は迷った。

けれど倒れそうな病人をほっとけない。

「じゃ、部屋まで…」

結局断り切れなかった。

階段を上がって部屋の前に着くと真理亜が扉を開いて灯りをつけた。

開いた瞬間、プーンといい香りがした。

広い部屋。10畳はあるだろうか?

(女の子ってこんな部屋なんだ。)

初めて見る光景に興味深々で思わず、中に足を踏み入れてしまった。

大きなドレッサー、ピアノもおいてあって窓にはピンクのカーテン。

メルヘンの世界だ。

一番奥にベッドが置いてあるのはダブルベッド?

一人で寝るには広すぎる。

頭に広がる空想をもみ消し、真理亜をベッドに寝かせた。

「ゆっくり、休んで。
それじゃ行くよ。」

「勉くん!」

(まだ、何か?!)

心でそう、つぶやく。

「私を信じてくれる?あの子が言った事…
絶対してないから!」

頬に流れる涙は本物?!

「うん、わかったよ。信じるよ。」

真理亜は僕の手をギュっと握ってほほ笑んだ。

(か、かわいい…)

急に心臓がバクバクと早いスピードで打ち出した。

「勉君、もう一つ、お願い…聞いてくれる?」

(次は何?!)

本当に心臓に悪い。

「そこの冷蔵庫からジュース取ってくれる?」

「あ、ああ。」

一瞬、変な想像をした自分が恥ずかしい。

「はい、どうぞ。」

僕が手渡したジュースを真理亜は一気に飲み始めた。

口元からジュースがしたたり落ちる。

白いブラウスが濡れて中の下着がうっすら浮きあがってくる。

(…ブ、ブラジャーの形が……)

僕は乾いた喉でつばを飲み込んだ。

緊張で吹き出る汗…

ポケットから出したハンカチがベットリ濡れている。

これ以上ここにいる訳にはいかない!