そしてみゆきの目線がある一点で止まった。

(あれや!)

視線の先には……

メガネをかけた学生、
…僕だ。


みゆきはすぐにユリの携帯にメールを送った。

(あそこの窓際見てみ。
ちょうどええカモがいてるやろ。)

 
(何?あのメガネの子?おっさん違うやんか。)

(面白そうやん。今日はあの子に決まり!)


みゆきは完全に僕をターゲットにしたようだ。

少しためらっているユリ

(うちに任せとき。
ユリはいつもみたいに証人になってくれたらいいから。)

ユリはみゆきを誰よりも信頼いていた。

(うん、分かった。
みゆきに任せるわ。)

みゆきは早速行動を開始した。

少しずつ人をかき分け、近づいて来る。

僕が傘を持っている手に背を向けて立つ。

人に押されたフリをしてもたれ掛ってきた。

僕はそんな事に全く気付いていない。


・・・・・・
[次はなんば、なんば…]

アナウンスが流れる。


[なんば]駅につくと人の波が一気にホームへと降りて行く。

もたもたしていると倒れてしまいそうだ。

僕は必死で倒れないようにバランスを保ちながらなんと無事にホームへと降り立った。

(あれ?)

進もうとした瞬間、傘を持つ手が自由に動かない事に気づいた。

(ん?!)

誰かが僕の手首をつかんでいる。